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トラウムブルグ7番地

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 水辺の学校
僕は、自分の名前が嫌い。
『薫』っていう名前、女みたいで嫌い。

僕は水が嫌い。
もっと小さかった頃、ビーチプールで溺れたから嫌い。

僕は高いところが嫌い。
高いところなんて好きな人っているのかなぁ……だって、怖いんだもん。

はっきりいって、自分が嫌い。
臆病だし、目立たないし、頭だって悪いし……





そんな僕に、また嫌な季節がやってきた。

み~ん、みんみんみ~~~……

暑いから嫌いなんじゃない。
僕は、暑くても寒くても平気。
そんなことよりも……

クラスメイト
「わ~~~い!!!」

バシャン、バシャン!!!
学校の前に掛かってる橋は、怖い。
だって、すごく高いもん。
ガードレールもついてない橋なんて、怖いもん。

みんな、学校帰りにはその橋から『飛びっこ』をして遊んでる。
僕は怖いから、そんな事できない。

クラスメイト
「わーっ!はっけーっ!!!」

クラスメイト
「くそおっ!こっちさ水かけんなったよなーっ!」

やっぱ、暑いのなんて嫌い。





声1
「かおるーん、一緒に飛びっこしねがー?」

学校の前を通り過ぎると、見えない川底から声が聞こえてきた。

声2
「だめだめ、かおるんはすった暇ねぇべ。家さ帰って勉強さねば、まだ先生に怒られるべ?」

その声に、僕は少しカチンときて、川の下を眺めてみた。
川の水は、綺麗なほど透明で、やまめが泳いでいるのが見えた。
でも、川底は深くて、足が震えた。

クラスメイト1
「んだんだ。早く家さ帰ってだ方がええべ」

橋の下から、数人の笑い声が聞こえる。
みんな、僕のクラスメイトだ。


「僕は、あっちさ掛かってる橋どご通った方が、家さ近けぇんだー!んだがら、ここの橋でなば、飛びっこしねぇんだー!」

川の下流に掛かるもう一つの端を指差し、思いっきり叫んでやった。
そして、後ろから聞こえる笑い声を無視して、走った。
しばらくして、声が聞こえなくなった頃、ふと後ろを振り向いた。
僕の視界には、学校と、橋と、おんぼろの家が一軒映っていた。





次の日、僕はまた宿題をやっていかなかった。
教室の前にある、先生の机に一人一人宿題を出していくとき、僕はまた先生に怒られた。

美浜先生
「薫くん、みんな宿題やってきてるんだから、しっかりこれくらいはやってきましょうね」


「は、はい……」

クラスメイト9人のこの教室に、少し「クスクス」という笑い声が聞こえてきた。
どうせ、あいつらは、クラスで一番頭のいいチビっこ小夜のノートを写しただけなんだろう。
そう思うと、少しムッとした。

クラスメイト1
「昨日は宿題やんねばーって、早ぐ帰ったんじゃねっけがぁ?」

皮肉に言うあいつの言葉で、クラスからまた笑い声が聞こえてきた。

美浜先生
「こらっ、みんなも笑わない!クラスのうち半分は同じ回答だって、先生ちゃんと知ってるんですからね」

そう言うと、クラスはまた静まり返った。

美浜先生
「薫くん、今度はちゃんとやってきなさいよ」


「は、はい」

美浜先生
「それに、ちゃんとみんなと一緒に遊べるようになりなさいよ」

そう言って、先生はにっこり笑った。
その笑顔に、僕は一瞬ドキッとした。





次の日の朝、僕はあの橋の上にいた。
まだ誰も登校してきていない。
みんなは日が暮れるまでここで遊んでるから、明るいうちにここに来れるのは、この時間しかないから。

(やっぱり高いや……)

足がガタガタ震えた。

(やっぱり、僕には無理……)

僕は、諦めて戻ろうかと、したとき、そこには一つの朝日に伸びる影が見えた。


「見てたべ……」

小夜
「…………」


「見てたべ……」

小夜
「…………」

小夜は、何も言わずに橋の向こう側に走っていった。


クラスメイト1
「かおるーん?朝飛びっこでぎだがー?」


「……なんで、その事知ってるなだ?」

クラスメイト1
「すったごど関係ねべー。かおるんが飛べだなら、えなーって思っただげだベー」

そいつは、口元がにやついていた。
すごくムカついた。
誰がチクった?
飛びっこの練習を知ってる奴……そうか、小夜だ。
あいつなら、朝に僕に会ってるから。


「チクったべ?」

小夜
「…………」


「チクったべ!」

小夜
「…………」

何も言わない、小夜に腹が立った。
だから、手を上げた。

パシンッッ!!!

小夜
「言ってないもん……私じゃないもん」

そのとき、後ろから誰かが教室に入ってくる音が聞こえた。





美浜先生
「どうしてあんなことをしたの?」

放課後。
職員室呼ばれて、僕は美浜先生の前に立たされていた。

美浜先生
「言ってくれなきゃわかんないでしょ?」


「…………」

美浜先生
「ほら、泣かないで……怒ってる訳じゃないのよ。先生は、知りたいだけなの。薫くんも小夜ちゃんも、悪い子じゃないから」

そう言って、先生は僕の視線に目の高さを合わせる。


「だってね、飛びっこがでぎねから……僕、練習しようとしたんだ……でも、やっぱでぎねくて……それを小夜に見られてて……」

ふぅっと、先生はため息をついた。

美浜先生
「薫くん、誰でも初めはそうなのよ。だから、ゆっくり練習していけばいいの。焦らないでいいのよ」

先生は、僕の頭をなでてくれた。
優しい手、そしていい香りがする。

美浜先生
「もし飛べるようになったら、先生にも教えてちょうだいね」


「う、うんっ!」





次の日の朝、僕はまたあの場所にいた。

(今度こそ……今度こそ……)

足が震える。
飛ぶ姿勢に入るために、少し足を曲げて、橋の前につんのめりになる。
目を瞑る。
少し体を揺らす。

しかし、目を開けてしまった。
ずっと下に、川の水の流れる音。
怖い。

やっぱり、今日もダメだった。





学校に行くと、一つ、席が空いていた。

クラスメイト1
「なんで今日に限って小夜がいねんだぁー!」

「国語」と下手な字で書かれたノートをぶら下げて、奇声をあげていた。
風邪引いたのかなぁ……それとも……
僕の頭の中に、最悪の状況が渦巻いていく。

美浜先生
「今日は、小夜ちゃんは風邪を引いて休みだそうです。あとで元気になるように、一人一言、応援の手紙を書いてあげましょう」

クラス中からは「えー」とか「うー」とかといった声が聞こえてくる。
本当に風邪なのかなぁ……もしかして、昨日の僕のせい……

僕は、小夜への手紙を書いた。

『昨日はごめん。元気になったら、遊ぼう』

それを先生に渡した。


「誰にも見られねぇように、頼むなぁ」

美浜先生
「うふふ。はいはい、分かりましたよ」

ちらりと僕の手紙を読んで、先生は僕の手紙をバッグにしまった。
昼休み、先生はその手紙を小夜の家に置きに行ったみたいだった。





放課後、僕はもう一度頑張ってみる。
今度こそ、飛びっこをやってやる。
先生に笑われないように、小夜に笑われないように。

クラスメイト1
「かおるーん!飛べねぇんなら辞めだ方がええどー!」

クラスメイト2
「おめぇには飛べねんだがら、やめれってー!」

僕は、その言葉に耳を傾けなかった。
ただ目を閉じて、橋の上にしゃがんでいた。

飛ぶ。

ただそれだけを、頭に描いて……



ふわっと体が浮いた。



声が出なかった。
気持ちよかった。

そして、体が水に触れた。

ただ静かに、水の音が聞こえていた。
静かだけど、今までで一番近くに聞こえる水の音。
触れた水が、冷たくて気持ちいい。



気持ちいい。



クラスメイト1
「気持ちええベー。何で今までやってねがったが、失敗したーって思ったべ!」


「う、うん!」





川から上がると、そこにはボロい家が目の前にあった。
そこの二階から、見知った顔が見えた。

小夜だ。

僕は、大きく手を振った。
そうすると、その人影も元気に手を振り返した。
その顔は、今まで見てきた小夜の表情の中で、一番笑顔だった。

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(2009/03/06(金) 03:05)

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